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CDロムに化けた家賃

 私は、一目見たその瞬間に飛びついて買う、というようなことはまずしないタチである。では衝動買いなど全然しないかと言うと、これがそうでもない。右往左往して悩んだり自分を説得したりした挙句、やはりドカンと買ってしまい、後で後悔するのである。何のことはない、イサギヨサというかフンギリというかが欠けているだけなのだ。
 K都で一人暮らしを始めて最初の冬のことである。研究室の空気・人間関係など何かとおもしろくなく、気分がめいる時の多かった私の当時の気晴らしは、パソコンゲームだった。年末の近いある日、私は売り出しでにぎわう電気街へ遊びに出かけた。今を去ること10数年前、バーゲンとはいえ、その頃のパソコンの周辺機器の高さは現在の比ではない。当然私も「見るだけ」のつもりだった。
 何軒か店を見て回った後、「Jシン電気」に入った。年末セールの店内はさすがに賑やかである。『タイムサービス!』の大見出しが、キョロキョロ物欲しげに店内を見回している私の目に飛び込んできたのは、まさにそのときだった。
『タイムサービス!4倍速CDロムドライブ ¥4?000!!』
 現在でこそ、「4倍速CDロム」は「33回転レコード」みたいな印象を与えるが、当時はまさしく最先端の技術であった。そもそもCDロム自体、海外のゲームやウィンドウズ専門のアプリにしか採用されていなかった時代である。そんなものがこの私には不必要であることは、火を見るより明らかなことであった。にもかかわらず、その広告は、ひどくそのときの私の心を掻き乱したのである。
「買っても使わんだろうなあ。・・・いや、買ったら使うかなあ。これからはCDロムのゲームも増えるだろうし・・・」
 しかも何の因果か、そのとき私の財布には、まだ振り込む前の家賃がソックリ入っていたのである。
「チャンスだよなあ。買えるのに買わんのは卑怯だよなあ。買える時に買わんかったら後で後悔するかも・・・」
 こうして、いつしか私は、自分自身をマギレもない詭弁で説き伏せてしまっていた。その月の家賃が、CDロムに化けてしまった瞬間である。
 ・・・その後約半年間、そのCDロムは、4倍速も何も関係ない「CDプレイヤー」として主に活躍した。そして時の流れとともに見る見る骨董品と化したパソコンもろとも、バイトの後輩に、アッサリ譲り渡されて―押し付けられて―しまったのだった。
 単なる衝動買いもそれなりに問題がある行為だろうが、ましてやパソコン関係でそれをするとは、自殺行為に他ならぬと学んだことである。

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 「買うつもりはなかったのに、気づいたら手に持っていた」「値段を確かめずにレジに [続きを読む]

受信: 2005/07/21 11:43

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