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読み間違い

 麻生総理大臣が、公衆の面前で次々に漢字の読み間違いをやらかしている、という記事を読んだ。
 総理大臣はいい政治をすることが仕事なのだから、漢字の読解力など関係ない、という見方もある。いちいち人の言葉尻をつかまえてあげつらうのは大人気ない、という考え方もある。結局、単なる読み間違いにすぎないのだから目くじら立てるに及ばない、という意見もあるようである。
 しかし、想像せずにいられないのは、もしこれが「現代大学生の漢字読解力調査」などの結果だったら、どんなに新聞がこぞって叩かずにおかないだろうか、ということだ。「頻繁」を「はんざつ」と読むなんて、学力低下もここに極まれり、ゲームばかりやって読書しないからこんな恥ずかしい間違いをしでかすのだというふうな論調で非難を浴びせたに違いない。
 非難する側としては、総理大臣はいわば日本国家の代表者であるから、これをけなすのはある意味日本国家やそこに居住する日本国民をもけなすことになるので、慎重にならざるを得ないという意識が無意識にあるのだろう。また、「日本の」総理大臣という身分上、他国の首脳の存在を意識して、何となく失策をかばってやりたいような愛国意識も影響するのだろう。それでいて、同じ日本人でも大学生のような若者には容赦しないというのは、例の「大人は子どもとは違う」という区別感、そのなせるところの一種高ぶった教育者意識によるものだろうと思われる。
 あせったり急いだりしたあまりの読み間違いなのだから、きびしく咎めるには及ばない、という意見があるが、そういう時には思わず人の「本音」が飛び出すものである、とよくいう。首相が日中国交を目して「ひんぱん(頻繁)」というべきを「はんざつ(煩雑―ややこしくわずらわしい)」と言ったというのは、もしそうなら、こちらのほうが単なる読み間違い以上にひどい失態である。今までのやり方を「とうしゅう(踏襲)」とするべきを「ふしゅう(腐臭)」といったというのも、変に辻褄が合うだけにおかしい。こんな間違いを国家の最高政治機関で平気で何度も繰り返すくらいなら、高校生や大学生が学校の漢字テストでほんとうに読み方を知らずに間違えるほうがずっと無邪気で罪がなかろう。
 政治家は漢字の読み間違いなどいちいち気に留めるものでない、というのもたしかにその通りだろう。政治と漢字の読み方といずれがより重要かといわれたら、考えるまでもなく前者の方がはるかに重要なのに決まっている。が、頭のいい留学生なら結構読めるような漢字をも間違えて、しかも少しも動じる色がないというのは、あるいは豪快を衒っているのかもしれないが、どうも一風変わっているように感じられる。これから日本の小学生や中学生が「総理大臣だって読めないんだから、読めなくてもいいんだ」と安心して、漢字の勉強をさぼり出さないか心配だ。

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